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派遣の歴史を辿る!発祥やこれまでの出来事を解説!

派遣の発祥は1948年頃のアメリカと言われております。

その後どのように日本に人材派遣ビジネスが来たのか。

日本では今に至るまでにいくつもの法整備もされてきました。そんな派遣と派遣に関連する法律の歴史について深堀解説していきます。

派遣ビジネスとは

派遣ビジネスとは、人材派遣会社が労働者を雇用し、派遣先の企業に一時的に提供する雇用形態のことです。

派遣ビジネスは、現代の多様な人材ニーズに応える柔軟な人材活用方法として、世界中で広く利用されていますが、その歴史は意外に古く、さまざまな変化を経てきました。

派遣ビジネスの始まり

派遣ビジネスの原型は、江戸時代に日本で見られた「人貸し」と呼ばれる仕組みにさかのぼることができます。

これは、中間業者が労働者を雇い入れて、需要のある事業所に貸し出すというものでしたが、

労働者の搾取や強制的な労働が横行するなどの問題がありました。

戦後、1947年に職業安定法が制定されると、「労働者供給事業」として原則禁止されました。

最初の派遣会社

世界で最初に人材派遣会社として誕生したのは、1948年にアメリカで設立されたマンパワー社です。

始まりの出来事として語られているのは、『2人の弁護士が最高裁判所へ提出する書類の、

期限が迫っていた時に、秘書の助けを求めていた事に気づいたこと。』がきっかけでした。

その時「必要なときに、必要な人を、必要な期間だけ派遣する」サービスを提供すべく、会社を興しました。

 

この会社は、第二次世界大戦後の人手不足や女性労働者の増加などを背景に、一時的な事務や工場作業などの人材を提供するサービスで、世界各国に進出し、現在では200カ国以上で事業を展開しています。

日本に伝わった時期

日本では、1966年にアメリカから「派遣サービス」が輸入されました。

当初は外資系企業が主な利用者でしたが、1970年代に入ると日本企業でも専門的な知識や技術を持つ外部人材を補うために利用するようになりました。

しかし、当時は職業安定法で禁止されていた「労働者供給」に該当するため、「業務請負」という形態で対応していました。

日本の法整備

日本で正式に派遣ビジネスが認められたのは、1985年に労働者派遣法が成立したときです。

この法律は、「直接雇用(正規雇用)を保護する」という前提のもとで、「専門的な知識や技術が必要とされる13業務(後に16業務)」だけを対象として派遣を許可しました。

これは「ポジティブリスト方式」と呼ばれるものでした。

※ポジティブリストとは「原則禁止している中で、許可するものをリスト化したもの」です。

派遣業務の拡大とその背景

1990年代以降、バブル崩壊や景気低迷などの経済環境の変化や、グローバル化や技術革新などの社会的な要因により、派遣ビジネスに対するニーズや課題も変化しました。

これに対応するために、派遣法は何度も改正されてきましたが、その中でも特に大きな変化があったのは、1999年と2012年の改正です。

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1999年 対象業務の原則自由化

2004年 製造派遣解禁

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これにより 営業・販売・一般事務・製造といった専門業務以外の業務でも派遣が可能になりました。

リーマンショックの影響

2008年にアメリカで発生したリーマンショックは、世界的な金融危機を引き起こし、

日本経済にも大きな打撃を与えました。

特に製造業では、「派遣切り」と呼ばれる派遣労働者の解雇や雇い止めが社会問題となりました。

その結果、リーマンショック後の社会問題の一因に、

人材派遣サービスが関係あるのではないかという議論が国会で取り上げられることになり、

派遣労働者の保護や雇用安定を図るための法改正の契機となりました。

労働者保護

2012年の改正では、「ネガティブリスト方式」は維持されましたが、派遣労働者の保護や雇用安定を図るために、いくつかの規制が強化されました。例えば、派遣期間の上限が3年と定められたり、同一労働同一賃金の原則が明記されたりしました。また、紹介予定派遣や無期雇用派遣といった雇用形態も整備されました。

反対に、派遣会社の責任が増えたり、事業運営の見直しに繋がっていくことになります。

※ネガティブリストとは「原則禁止していない中で、禁止しているものをリスト化したもの」です。

派遣法の大幅な改正

2015年の改正では、さらに派遣労働者の保護や雇用安定を強化するために、

以下のような内容が盛り込まれました。

  • 派遣事業の「許可制」への一本化
  • 派遣期間を原則一律上限3年(3年ルール)に変更
  • 派遣労働者の雇用安定・キャリアアップ措置の実施
  • 派遣先で直接雇用された労働者と派遣労働者の待遇格差を解消する「同一労働同一賃金」

 

規制緩和で雇用安定の措置が義務付けられ、何年でも派遣労働者を受け入れられるようになり、

結果的にすべての業務において、人が変わることで継続的に派遣利用が可能となりました。

企業側から見れば規制強化の側面が強く、労働者側からみれば働きやすくなった改正となりました。

現在の派遣について

2020年度における派遣労働者数は約193万人であり、

日本の労働市場において重要な役割を果たしています。

コロナ禍による影響もあり、人材ニーズや求人動向は変化していますが、

少子高齢化に伴う人手不足や多様な働き方への対応など、今後も派遣ビジネスは注目されるでしょう。

派遣法改正の流れ

これまで派遣法の改正が度々されてきましたが、まとめると以下のような流れになります。

  • 1985年:派遣法成立。13業務(後に16業務)だけを対象とする「ポジティブリスト方式」
  • 1996年:10業務追加。計26業務となる。
  • 1999年:禁止業務だけを指定する「ネガティブリスト方式」へ転換。紹介予定派遣解禁。
  • 2004年:製造業務への派遣解禁。
  • 2007年:製造業務への派遣の上限期間を3年に制限。
  • 2008年:リーマンショックにより派遣労働者の大量解雇が発生。
  • 2012年:派遣期間の上限を一律3年に統一。同一労働同一賃金の原則を明記。
  •                  紹介予定派遣や無期雇用派遣を整備。
  • 2015年:派遣事業の許可制への一本化。派遣労働者の雇用安定・キャリアアップ措置の実施。
  • 2019年:派遣労働者の雇用安定・キャリアアップ措置の実施状況を検証するための調査を実施。
  •     派遣先企業に対する派遣労働者の待遇改善の促進や、
  •     派遣会社に対する派遣労働者の雇用管理の徹底などの方針を示す。
  • 2020年:新型コロナウイルス感染症の影響により、派遣労働者の雇用環境が悪化。
  •     政府は、派遣労働者に対する給付金や再就職支援などの緊急対策を講じる。
  •     パートタイム・有期雇用労働法が施行され、正社員と非正規雇用労働者との間で、
  •     不合理な待遇差を設けることが禁止される。
  • 2021年:派遣法改正に伴う見直し期間が終了。
  •     政府は、派遣法改正の効果や課題を評価し、今後の方向性を検討する。

 

※参考【2023年最新】労働者派遣法 改正の歴史早見表│違反しないためには | 人材派遣・人材紹介のマンパワーグループ (manpowergroup.jp)

まとめ

  • 派遣の発祥は1948年頃のアメリカ
  • 日本は労働者派遣法が施工された1985年にスタート
  • リーマンショックを期に労働者保護のための規制を強化していった
  • 2015年の大幅な改正で、さらに労働者が働きやすい環境に
  • コロナで厳しい時期もあったが、2023年の市場規模は堅調に推移