
玉掛けの資格とは?2種類の技能講習と資格取得のメリットとは
工場や建設現場などで重い荷物をクレーンで持ち上げる場合、フックに荷物を掛けたり外したりします。
これを玉掛けといい、玉掛け業務を行うには資格を取得する必要があります。
玉掛けは未経験者にとっては何気ない業務と思うかもしれませんが、扱いを誤ると死亡事故を起こすこともある危険な業務の一つです。
そこでこの記事では、玉掛けの資格や業務の重要性を解説します。資格取得に必要な技能講習の内容も紹介するので、資格取得を目指す人はぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
玉掛け業務の重要性
玉掛けは、専門の国家資格を保有する人しかできない業務です。
クレーンで持ち上げる荷物は極めて重く、力学など専門の知識がないと途中で落下して資材が破損するだけでなく、人が下敷きになって死亡する可能性もあります。
民家や歩道などに落下すれば、作業者以外の人に危害を加えてしまうこともあります。
工事現場や建設現場、その周辺の安全を守るためにも、玉掛けは現場において重要な業務の一つです。
玉掛けの資格とは
玉掛けの資格は、正式には玉掛け技能講習といいます。
玉掛け技能講習は、制限荷重が1トン以上の揚貨装置(船舶に設置されたクレーン)やつり上げ荷重が1トン以上のクレーンで玉掛け作業を行う場合に必要です。
満18歳以上であれば誰でも受講でき、15時間または19時間の講習で資格を取得できます。
玉掛け資格取得のための技能講習
玉掛け資格取得のための技能講習は、AコースとBコースの2種類にわかれます。
クレーンや揚貨装置の運転資格がある人や運転技能講習を修了した人はBコース、それ以外の人はAコースを受講します。
講習を受ける場所によってはAコースとBコースが逆になっている場合がありますので、詳しくは各登録教習機関のサイトを確認してください。
Aコース(クレーンなどの運転に関する資格がない人)
Aコースは、満18歳以上なら誰でも受講できます。
講習は学科と実技を合わせて3日間で行われ、カリキュラムは下表の通りです。
カリキュラム(Aコース) | ||
---|---|---|
学科(1・2日目) | クレーンなどに関する知識 | 1時間 |
クレーンなどの玉掛けの方法 | 7時間 | |
クレーンなどの玉掛けに必要な力学に関する知識 | 3時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
学科試験 | ||
実技(3日目) | クレーンなどの運転のための合図 | 1時間 |
クレーンなどの玉掛け | 6時間 | |
実技試験 |
学科試験と実技試験はそれぞれ1時間あるので、合計21時間です。
Bコース(クレーンなどの運転に関する資格がある人)
Bコースは、満18歳以上で下記いずれか1つの資格を保有する人が受講できます。
・クレーン・デリック・揚貨装置いずれかの運転士免許
・小型移動式クレーン運転技能講習修了者
・床上操作式クレーン運転技能講習修了者
講習は学科と実技を合わせて3日間で行われ、カリキュラムは下表の通りです。資格保有者は、力学と運転のための合図が免除されます。
カリキュラム(Bコース) | ||
---|---|---|
学科(1・2日目) | クレーンなどに関する知識 | 1時間 |
クレーンなどの玉掛けの方法 | 7時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
学科試験 | ||
実技(3日目) | クレーンなどの玉掛け | 6時間 |
実技試験 |
学科試験と実技試験はそれぞれ1時間あるので、合計17時間です。
玉掛け資格を取得するメリット
玉掛け資格を取得するメリットは、以下の3つです。各種クレーンの運転免許と合わせて取得すれば、就職・転職やキャリアアップもしやすくなるでしょう。
・就職や転職に有利になる
・キャリアアップに繋がる
・より安全に玉掛けができるようになる
就職や転職に有利になる
玉掛け資格を取得すると、就職や転職に有利になります。
資格取得支援をして未経験者を採用する企業もありますが、すでに保有している人のほうが企業も採用しやすいでしょう。
転職の際も、玉掛け資格保有者は十分な現場経験がある可能性が高いため、採用されやすい傾向があります。
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キャリアアップに繋がる
玉掛けは資格がある人しかできません。これまで有資格者に任せていた業務が自分でできるようになれば、仕事の幅が広がります。
クレーン運転士免許などと合わせて取得することで、クレーンを用いた一連の業務に携わることができます。
現場でキャリアアップを目指したいなら、玉掛け資格を取得するメリットは大きいでしょう。
安全に玉掛けができる知識とスキルが身につく
玉掛け技能講習では、力学や運転のための合図など、安全に玉掛けを行うための知識・技術を学べます。
玉掛けに関する法令も学べるため、資格を取得すれば法律を遵守して安全に作業をすることができるでしょう。
玉掛け資格が必要なケースと不要なケース
玉掛け資格(玉掛け技能講習)は、扱うクレーンによっては不要なケースがあります。
玉掛け技能講習が必要なのは、制限荷重やつり上げ荷重が1トン以上のクレーンで玉掛けを行う場合です。
1トン未満の場合は、玉掛け技能講習は不要です。ただし、玉掛け特別教育を修了する必要があります。
特別教育との違い
玉掛け特別教育は、技能講習とは異なり試験がなく、受講時間も9時間と短いです。
特別教育は満18歳以上なら誰でも受講でき、1日で修了できますが、制限荷重やつり上げ荷重が1トン以上のクレーンでは玉掛けができません。
大型のクレーンを扱う場合は、技能講習が必要です。
小さな工場や工事現場であれば特別教育修了者でも対応できますが、様々な現場で活躍したいなら玉掛け資格を取得したほうがいいでしょう。
玉掛け資格と同時に取得しておきたい資格
玉掛け資格は玉掛け業務に必要な資格ですが、クレーンなどの操作を伴う場合がほとんどです。
そのため、以下の資格も同時に取得しておくと、より現場で活躍できるでしょう。
・クレーン・デリック運転士免許
・移動式クレーン運転士免許
・揚貨装置運転士免許
クレーン・デリック運転士免許
クレーン・デリック運転士免許は、つり上げ荷重5トン以上のクレーンやデリックを運転する際に必要な免許です。
クレーンとデリックは別々の免許でしたが、2006年4月に統合されました。クレーン・デリック運転士免許は以下の3種類にわかれています。
・クレーン・デリック運転士免許(限定なし)
・クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
・クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)
クレーン・デリック運転士免許と玉掛け資格を同時に取得することで、クレーンの運転と玉掛け業務の双方を担うことができます。
移動式クレーン運転士免許
移動式クレーン運転士免許は、つり上げ荷重5トン以上のトラッククレーンなどの運転に必要な免許で、大型の移動式クレーンを運転する際に必要です。
大規模なビルなどの建設現場なら、移動式クレーン運転士免許がないとクレーンの運転はできないでしょう。
一方で、つり上げ荷重が5トン未満であれば、免許ではなく運転技能講習や特別教育で足ります。
移動式クレーンの運転に関する資格は以下3種類にわかれているので、現場でよく使うクレーンのつり上げ荷重に応じて取得しましょう。
・移動式クレーン運転士免許:つり上げ荷重5トン以上
・小型移動式クレーン運転技能講習:つり上げ荷重1トン以上5トン未満
・移動式クレーンの運転の特別教育:つり上げ荷重1トン未満
揚貨装置運転士免許
揚貨装置運転士免許は、船舶に設置された制限荷重5トン以上のクレーンやデリックの運転に必要な免許です。
陸から船、あるいは船から陸へ貨物を積み替える際は、バランスが崩れて船が沈没しないように気をつける必要があります。
そのため、同じクレーンでも免許をわけているのです。
なお、制限荷重5トン未満の揚貨装置であれば、揚貸装置運転特別教育を修了すれば運転できます。

まとめ
ここまで記事を読んでくださりありがとうございます。
この記事を通じて、玉掛けの資格について理解が深まりましたら何よりです。
何らかの資格を身につけてステップアップしたい人はぜひ参考にして、新しいキャリアに挑戦してみてください。
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